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横井也有の俳文選
269「示俳席掟」

☆「示俳席掟」(はいせきのおきてをしめす)

 横井也有著『後鏡裏梅』に掲載されている俳文で、明和6年(1769年)5月10日の「定茶名文」より後で、前出の明和7年(1770年)秋の五言絶句や「更幽亭記」以前の作であることを示し、也有が数え年68〜69歳の頃の作と考えられます。これは、長谷川三止が也有に書かせたものですが、連句の会に集まった連中の食事がとかく派手になりやすくなるのを戒めた短文でです。これにより、三止たちが楽しんだ内津(現在の愛知県春日井市内津町)の俳席の情景がわかります。

☆「示俳席掟」(はいせきのおきてをしめす) (全文) 

<原文>

 一汁一菜[1]香の物[2]、なら茶[3]は、勿論一汁にも及ばず。酒は二献[4]に限りて、肴[5]一種は有ても無くても、是我に俳席[6]の定なるよしと思はゞ、これにならふべし。茶は殊に手枕[7]の名産あれば、幽耕亭[8]の饗は何なくとも足りぬべし。
 右求に依て書きて贈る。

昭和58年3月30日 名古屋市教育委員会発行『名古屋叢書三篇 第十七巻・第十八巻 横井也有全集 中』より

(現代語訳)  示俳席掟

 副食物が汁(しる)一品、おかず一品と漬物、奈良茶飯ならば、もちろん汁を付けることはない。酒は、6杯までに限りて、肴一種は有っても無くても、これが私の句会の席の定だと思えば、これに従うべきである。茶は特に「手枕」という名産があれば、長谷川三止亭の饗は何がなくても足りるであろう。  
 右は、求めに応じて書いて贈る。

【注釈】

[1]一汁一菜:いちじゅういっさい=副食物が汁(しる)一品、おかず一品だけの食事。質素な食事をいうことがある。
[2]香の物:こうのもの=野菜を塩・ぬか・味噌・酒かすなどに漬けたもの。
[3]なら茶:ならちゃ=奈良茶飯。薄く入れた煎茶でたいた塩味の飯に濃く入れた茶をかけて食べるもの。また、いり大豆や小豆・栗・くわいなどを入れてたいたものもある。もと、奈良の東大寺・興福寺などで作ったものという。
[4]二献:にこん=杯を3回重ねることを一献という。すなわち、1杯飲むのが一度で、3杯が一献になるので、二献は6杯飲むこととなる。
[5]肴:さかな=酒を飲むときに添えて食べる物。飲酒のときの魚、肉や果実、野菜など。
[6]俳席:はいせき=俳諧を催す席。句会の席。
[7]手枕:たまくら=也有が名付けた内津に産する茶の銘。
[8]幽耕亭:ゆうこうてい=内津の住人長谷川三止の住居の名称(也有が名付けた)。更幽居とも言う。

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