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横井也有の俳文選
180「袋の賛」

☆袋の賛(ふくろのさん)

 横井也有著正編『後鶉衣』に掲載されている俳文で、宝暦14年(1764年)頃の作と考えられています。この俳文は、也有が世の中で、こだわったり、意地を張ったり、主義主張を唱えたり、形式や風習などにこだわるなど、とかく狭い料簡に固執したり、上下関係やら先輩後輩などの序列を重視する傾向などを揶揄したものとおもわれます。この俳文の一部「布の一袋、壺中(こちゅう)の天地を笑うべし」の碑が、隠れキリシタンの地として知られる熊本県天草市の大江天主堂にあります。

☆袋の賛(ふくろのさん) (全文) 

<原文>

 器は入るゝものをして、己が方円[1]に従はしめむとし、袋は入るゝものに從ひて己が方円[1]を必とせず。実なる時は肩に余り、虚なる時は懐[2]に隠る。虚実[3]の自在[4]を知る、布の一袋、壷中の天地[5]を笑うべし。

     月花[6]の袋や形は定まらず

昭和58年3月30日 名古屋市教育委員会発行『名古屋叢書三篇 第十七巻・第十八巻 横井也有全集 中』より

(現代語訳)  袋の賛

 器は、中に入れる物を自らの形に従えようとしているが、袋は、中に入れる物に従って自らの形を必要とはしていない。いっぱい入っている時は肩に余るくらいであるが、何も入っていない時は懐に隠すことも出来る。虚なる時と実なる時の思いのままであることを知る布の一袋は、俗世間を離れた別世界のことを笑うに違いない。

   賞翫したり寵愛したりするものも袋も形は定まっていないものだよ。

【注釈】

[1]方円:ほうえん=四角と丸。方形と円形。
[2]懐:ふところ=衣服を着たときの、胸のあたりの内側の部分。懐中。
[3]虚実:きょじつ=実質のないこととあること。空虚と充実。
[4]自在:じざい=思いのままであること。束縛や障害のないこと。また、そのさま。心のまま。
[5]壷中の天地:こちゅうのてんち=俗世間を離れた別世界。また、酒を飲んで俗世間を忘れる楽しみ。仙境。
[6]月花:つきはな=賞翫(しょうがん)したり寵愛(ちょうあい)したりするもののたとえ。

YuuTube 横井也有シリーズB 横井也有俳文選(1)「袋の賛」

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